相続土地国庫帰属制度とは?山林の手続きと注意点
- 一般社団法人日本不動産管財
- 2023年2月2日
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更新日:12 時間前
相続によって取得した山林を管理しきれない、もしくは手放したいと考える方も多いでしょう。2023年4月に施行された相続土地国庫帰属制度は、不要な土地を国に帰属させることができる新しい制度です。本記事では、この制度の概要や山林に適用する際の手続き、注意点について詳しく解説します。
相続土地国庫帰属制度とは
相続土地国庫帰属制度は、相続や遺贈により土地を取得した人が、その土地を手放したい場合に、一定の要件を満たせば国に帰属させることができる制度です。この制度の目的は、管理されないまま放置される土地を減らし、適切な土地利用を促進することにあります。
山林を国庫帰属させる条件
山林を国に帰属させるためには、以下の条件を満たす必要があります。
1. 土地の所有者であること
相続や遺贈によって土地を取得した個人が対象です。
法人や相続以外の方法で取得した土地は対象外となります。
2. 一定の要件を満たす土地であること
以下の要件を全て満たす必要があります。
境界が明らかである:土地の境界が不明確でないこと。
担保権や使用収益権が設定されていない:抵当権などの権利が付いていないこと。
土壌汚染や有害物質が存在しない:環境に悪影響を及ぼす恐れがないこと。
管理に過度の費用を要しない:崖地や土砂災害の危険がないこと。
他人による使用がない:不法占拠者などがいないこと。
手続きの流れ
1. 申請書の提出
法務局への申請:土地の所在地を管轄する法務局に、所定の申請書と必要書類を提出します。
必要書類:登記事項証明書、土地の図面、境界確認書など。
2. 審査
法務局による審査:提出された書類と現地調査を基に、要件を満たしているか審査されます。
審査期間:通常、3か月から6か月程度。
3. 負担金の納付
国庫帰属負担金:土地の管理に必要な費用として、一定の金額を納付します。
負担金の算定:土地の種類や面積に応じて計算されます。
4. 国庫への帰属
所有権の移転:負担金の納付が完了すると、土地の所有権が国に移転します。
登記の更新:法務局が所有権移転登記を行います。
山林特有の注意点
山林を国庫帰属させる際には、以下の点に特に注意が必要です。
境界の明確化
測量の必要性:山林は境界が不明確な場合が多いため、専門家による測量が必要になることがあります。
費用の発生:測量費用は申請者の負担となります。
環境保全上の問題
自然保護区域の確認:保安林や自然公園内の土地は、別途許可や手続きが必要な場合があります。
土壌や植生の調査:環境への影響がないか確認されます。
負担金が高額になる可能性
広大な面積:山林は面積が広いことが多く、その分負担金が高額になることがあります。
管理費用の加算:急斜面や崩落の危険がある土地は、追加の負担金が発生することがあります。
他の選択肢
相続土地国庫帰属制度以外にも、山林を手放す方法があります。
1. 売却
不動産業者への相談:専門の業者に査定を依頼し、買い手を探します。
メリット:売却益を得ることができます。
デメリット:買い手が見つからない場合があります。
2. 寄付
自治体やNPOへの寄付:公共の利益に適う場合、受け入れられることがあります。
メリット:社会貢献につながります。
デメリット:受け入れを拒否される場合が多いです。
3. 放棄
法的な所有権の放棄:相続放棄を行うことで、土地の所有権を取得しない選択もあります。
注意点:相続放棄は他の財産も放棄することになるため、慎重な判断が必要です。
専門家への相談をおすすめします
山林の国庫帰属は、手続きが複雑で専門知識が必要です。以下の専門家に相談することで、スムーズな手続きが期待できます。
弁護士:法律面での助言や手続きをサポートします。
司法書士:登記手続きや書類作成を代行します。
土地家屋調査士:境界の確定や測量を行います。
まとめ
相続土地国庫帰属制度は、管理が難しい山林を手放す有効な手段ですが、条件や手続きが厳格です。事前に要件を確認し、必要な準備を行うことが重要です。また、他の選択肢も検討し、自分に最適な方法を見つけるために専門家の力を借りることをおすすめします。
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