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「売れる山林、売れない山林」—その差を生む要因とは?

  • 執筆者の写真: 一般社団法人日本不動産管財
    一般社団法人日本不動産管財
  • 2024年12月13日
  • 読了時間: 4分

更新日:5 日前

近年、地方の土地活用や自然環境保護、さらには資産分散の一環として、山林への関心が静かに高まっている。都心部からの移住、キャンプブーム、アウトドア志向の拡大など、さまざまな社会的背景が山林売買市場を刺激している。しかし、いざ山林を売りに出そうとすると、「売りやすい山林」と「なかなか売れない山林」が存在するという現実に直面することが少なくない。一体、両者を分ける要因は何なのだろうか。ここでは、その主なポイントと近年の動向について考察する。



1. 立地条件とアクセス性

山林購入希望者が真っ先に考慮するのは、何といってもアクセスの良さである。


  • 交通の便: 鉄道駅や高速道路のICから車で1時間程度で到達できる場所は需要が高まりやすい。一方、公共交通機関が乏しく、未舗装路を長距離走る必要がある山林は、敬遠されがちだ。


  • 都市圏からの距離: セカンドホーム需要や週末利用を想定する場合、都市からあまりに離れた山林は人気が伸び悩む。程よい「非日常感」を保ちながらも、ほどほどの利便性が確保できる立地が理想とされる。



2. 土地の形状と利用可能性

山林は自然が生み出した不規則な地形を有するケースが多いが、地形や土地形状は利用価値や資産価値に大きく影響する。


  • 平坦部の有無: キャンプサイトや小屋を建てるスペースが確保できる平坦な部分があると、個人利用や商業利用の幅が広がる。対して、すべてが急峻な斜面で構成される山林は、実用面でハードルが高い。


  • 境界明示と測量状況: 境界が不明瞭な山林はトラブルの種となりやすく、買い手に敬遠される。しっかりと測量され、登記が明瞭な山林ほど売却がスムーズだ。



3. 法規制・権利関係

山林には、森林法や自然公園法、景観条例など、地域固有の規制が存在する。また、林道敷設や伐採計画には行政の許可が必要な場合もある。


  • 建築規制: 建物を建てることが難しい山林は、投資や利用の幅が限定されるため、売却が困難となりやすい。


  • 相続・共有権問題: 山林は世代を経て複数の相続人が複雑な共有関係を有していることがあり、売却時に手続きが煩雑になる。このような権利関係のクリアリングに時間と費用がかかる場合、売り手・買い手双方にとって負担が大きい。



4. 資源価値と収益性

純粋な投資対象として山林を捉える人々にとっては、その資源価値や収益性が最も重要な決定要因となる。


  • 木材価値: スギやヒノキなど商品価値のある樹種が計画的に植林され、適切な林業管理が行われている山林は、木材収入など将来的なキャッシュフローを見込める。


  • レジャー・観光需要: キャンプ場開発、アクティビティスペース(トレッキングコースやツリーハウス体験など)への転用が期待できる山林は、個人投資家や地方創生を目指す事業者にも注目されやすい。



5. 情報発信とブランディング

売れる山林は、単に条件が良いだけでなく、積極的な情報発信やブランディング戦略が行われている場合が多い。


  • オンライン情報提供: ドローン映像や地形図、インフラ状況などをわかりやすくオンラインで提供することで、遠方の買い手にもアピールできる。


  • コンセプトづくり: 「自然体験型教育施設用地」「サステナブル林業モデル」「プライベートグランピング向け」など、明確な利用コンセプトを打ち出すことで、魅力と差別化を図ることができる。



結論として、「売れる山林」と「売れない山林」を隔てる要因は、一概に一つではない。アクセス性、地形や法規制、資源価値や利用価値、そして情報発信のあり方など、多面的な要素が絡み合っている。今後、林業の衰退や人口減少による山林需要の縮小が懸念される中、売却を考える所有者には、早い段階から山林の測量や境界確定、適切な維持管理、独自の活用アイデアや情報発信の工夫が求められるだろう。「売れない」と諦める前に、これらの観点から山林を再点検することが、土地活用への新たな道を切り開く鍵となる。



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